 (撮影日 2003年4月18日) |
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「こんなに早く、満開になったのね」 「そう、満開だよ」 「昨日は、まだ五分咲きくらいよね」 「そう、半分だね」 「あの色になったのは、いつなの？」 「………」 満開になった滝桜を前に、私は問い詰めました。 滝桜の品種は、ベニシダレです。 一千年の時を重ねた桜ですから、全体を淡い紅色に染めることができるのは、ほんの僅かな時間でしかないと私は思っています。 気温が低い年であれば１日。気温が高くて、咲き進む勢いが早い年は数時間。 今、目の前に見ている滝桜が、朝の七分咲きから満開になったばかりだというのに、 こともあろうに、私は満開を喜ぶよりも、薄らいでしまった淡い紅色の行方を桜に問い詰めていました。 思えば、昨夜は満月でした。 月の出こそ朧月夜でしたが、真夜中には、寝静まった町並みを浮かび上がらせるように輝いていました。 一つのビルを滝桜に置き換えて、満月に浮かび上がる滝桜は、美しいというよりも、神々しいに違いない…そんなことを想像していたのでした。 「満月と知りながら、こないあなたが悪い…」 滝桜の声が、再び聞こえたような気がしました。 きっと、滝桜は、満月の光の下で、きれいな色彩に染まっていたことでしょう。 滝桜だけが月を見て、満月だけが桜を見る、１対１の月見と花見が、たとえ僅かな時間でもそこにあったのです。 それに気づいた時、私は、素直に滝桜の満開を喜べるようになりました。 「今年も出会えて、ありがとう」「きれいに咲いてくれて、ありがとう」と。 帰宅後、開花情報のページを見ていたら、その日の早朝６時の記録に、「一部の枝が白くなりました」とありました。 色にこだわってしまうと、日にちだけではなく、時間との競争になりそうです。 時間とだけは競争したくないので、いつか出会えることを心待ちにしたいと思います。(^_^) |