 (撮影日 2002年4月16日 神奈川県箱根町箱根園) |
| 湖のほとりに立つ、大きなオオシマザクラに出会ったのは、真冬のことでした。
明るい日差しに青い空、湖を前に大きく手を広げたオオシマザクラの枝ぶりに、しばし見惚れておりました。 しかし、四季折々の中で吹く、箱根の風の強さを、私は知らないわけではありません。 富士山を越えてくる風は、容赦なく湖へも叩きつけるように流れ込んできます。 伸びている細い枝先が、どうやってあの風を乗りきっていくのだろう。 一抹の不安を感じながらも、ここまで大きくなった桜の生命力を信じて、春に再び会えることを祈りながら別れました。 そして、オオシマザクラは、昨年よりも１週間も早く満開を迎えました。 一時は会うのを諦めよう……と思いましたが、明日、嵐がやってくると聞いて、いてもたってもいられなくなりました。 すでに嵐の影響は出ており、ロープーウェイの運行も止まる強風の中に、オオシマザクラは立っていました。 湖のほとりでは、私自身は風にあおられてしまい、立っているものやっとなほど…… オオシマザクラはと言えば、肩で息をするように、風を花の中へ取り込んでいます。 その姿を見て、ハッと気づきました。オオシマザクラは、風を受け止めているのではない、 桜自身が風にその身をゆだねているのだと。 しばらくして、時間にせかされてその場を立ち去ろうとした時、唸り声のような風の響きと共に、 つぶてと化した花びらが私に向かって叩きつけるように飛んで来ました。 |
